伝統文化新聞

2013/12/4 伊勢神宮 心の御柱

投稿日:2013-12-04 更新日:

いよいよ師走ですが、お元気でお過ごしのことと拝察します。「伝統文化新聞」という業界紙に連載して2年になります。「尺八の込み入った話など誰も読まない」ということで、あえて別ネタで自由に書いていたところ、宗教や民俗などテーマが自在に広がってゆき、今では音曲関連はたまにしかありません。その過程で、まとめた10月号「伊勢神宮の心の御柱について」は、ぜひ分かち合っておきたく、下記に添えました。ご一読いただければ幸いです。ご感想いただければ、励みになります。

今、ここ(この国)に、このような形で生を享けたことの意味を探る一環として、日本の歴史(特に、日本古代史や、江戸時代)や唯識仏教についてこだわって調べています。

小生の存命中には日の目を見ることはないと思っていた「虚無僧尺八」も、インターネットにより思わぬ広がりを見せ、


11月にはアメリカ、カナダより三人の来訪者がありました。26歳の若者は、小生に習うことを目的に日本での定住を希望し(国に帰って、頭を冷やせ、と断りましたが)、アリゾナからの75歳の退職した生物学の教授は、余生を小生のCDを参考に吹きたいと言っていました(ちなみに、彼は今、スカイプを通じて、ロンドンのイギリス人演奏家から習っているそうです)。アメリカで出している5枚のCDや、55曲の譜面、教則本などがこのような流れに寄与しているのは、間違いのないところなので、長らく放置してきた残りの段取りを、アメリカでつけています。

昨年一年は、独奏会をパスした代わり?に、何十年も指導してきたお弟子さんと会をやってきました。この日曜の12月8日(日)が、三回目、会場はいつもの新宿(牛込)の法身寺で、午後2時からです(4時過ぎには終わります。小生も吹きます。また、自ら尺八を吹いたという滝廉太郎の「荒城の月」「花」を二重奏、三重奏でやります。小生の丹精こめた編曲です)。おいでいただける場合は、メールにてご一報ください。

師走の二週目は、上海(たぶん、今、地球上で、いちばん空気が汚い)に出張し、翌週は、沖縄(宮古島)に家族とゆきます。それやこれやで今年も終わりになりそうです。

それでは、天皇制が定着する以前からあったと思われる、伊勢(古代では僻地)の太陽信仰が、形をなして今日まで伝えられてきた心臓部の、今日に伝わる姿をどうぞ。

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伊勢神宮・心の御柱   今年は、伊勢神宮の二十年に一度の「式年遷宮」の年だ。神殿だけではなく神宝(かんだから)も新しくなる。式年遷宮は、建物の造営が注目されるが、「神宝・御装束」という、平安時代の『儀式帳』に則り二千五百点にも及ぶ豪華な衣服や調度類も、当代の最高の美術工芸家により新調される。神々に供する調度品は、楽器や文具、日用品などにも及ぶ。高松塚古墳のころの高級品が、そのまま現代に継承されているのだから驚くほかはない。さて、伊勢神宮の正宮は写真撮影が禁止され、白い布で覆われているが、背後から少しだけ見える場所がある。正宮から荒祭宮(あらまつりのみや)に向かう途中に、屋根の部分が少しだけ、そして小さなお社が建っているのがはっきり確認できる。多くの秘密がある伊勢神宮だが、この小社の中にこそ、秘中の秘とされる「心の御柱」がある。正宮は撤去されるが、心の御柱だけは元の位置で、小屋で囲われて丁重に守られる。この柱は正宮正殿の中央の御床下に立てられる特別な檜で、梁には接していない。だから柱としての役割は果たしていないのだが、ここにこそ神が宿るとされている。「心の御柱」は、いつでも必ず正宮の真下にあり、真上の御正殿の位置には三種の神器の一つ「八咫鏡(やたのかがみ)」が丁重に置かれている。現在の伊勢神宮は、神饌を朝夕の二回外宮にのみ供えるが、以前は心の御柱にも供えていたという。おおよそ直径三十センチ、長さ百八十センチの「心の御柱」が正殿の八咫鏡の真下に安置された瞬間、自然神としてのアマテルは皇祖神アマテラスの依り代に転ずる。心の御柱に関係する祭祀も秘中の秘だ。神木を伐採する「木本祭(このもとさい)」は、神宮林で夜間秘密裡に執り行われる。今次の式年遷宮用の心の御柱は、平成十七年五月二日の深夜、御木の木本に坐す神を祭るため、「物忌(ものいみ)」と称する子供が忌斧を執って御料木奉伐の儀を行った(「忌」は清められたという意味)。式年遷宮時に新たに建てる「心御柱奉建(しんのみはしらけん)」のための祭も、平成二十一年夜間に秘事として非公開で行われている。「心の御柱」は、伊勢神宮の建築様式である「唯一神明造り」以前の名残りとも言われ、古代の自然崇拝が発祥で、木の切り株へ神が宿るとされる信仰が後に発展し、変遷したものと考えられている。

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