2008/10/30 曲目解説

投稿日:2008-10-30 更新日:

禅尺八(古典本曲)総覧
小生は現存する禅尺八曲のほとんどすべてを把握し、難易度別に体系化し終えている。カッコのついていないものは、公刊譜として印刷、販売されているものである(55曲分ある)。ここではその順序(初伝~皆伝)に従って紹介している。

虚無僧の伝えた禅の尺八は、ほとんど幻といってもよいほど今の尺八界には伝わっていない。まずどのような曲(名)があるのか、これをベースに全体像を把握してほしい。曲の由来や、特徴などは、これから順次書き足してゆく予定だ。禅尺八に興味をもたれる方は、自分で吹かれる方が多いと想像されることから、冒頭の一節を古式(最古のフホウ式ではない)に則って紹介してある。

現今の二大流派と古典本曲との奏法上の違いは、別途一文を設けて解説するが、尺八基本奏法の一つである「アタリ」・・・当該の音を冒頭から大きく出すために予備的音を加えること・・・を起点に言及するなら、都山流は基本的に「アタリ」を用いず(その意味では平板で譜の通りに吹く)、琴古流は、ほとんどの音を「アタリ」ないしは「メリコミ」を用いる(この点では、譜面に明記されていないさまざまな補助的技法が存在する)。

禅の尺八はこれら二流派の中間といえる。ある種の「アタリ」はあるものの、琴古流ほどはアタリを入れない。
尺八には元々流派というものは存在しなかった(地域の特性に根ざす、演奏や楽曲構成上の特性はあった)。建前的には、虚無僧という臨済宗の流れを汲む普化宗の僧侶(有髪妻帯が許され、葬儀を執り行わない)だけが奏することを許された。

禅の曲における「アタリ」は、強く鋭い息を初めに入れ、それが一息の中で徐々に弱まっていって、最後にごく微弱なかすかな息(音)で終わる。吹禅味のある曲であればあるほど、この要素は外せない。そこでは、いかに指を早く動かすかではなく、いかに制御された息が吐かれそれが自然な音に転化してゆくかのみが問われる。この一息で構成される一つの宇宙こそが、“一音成仏”の意味なのだ。

曲目を紹介するに際して、アイウエオ順も考えないでもなかったが、異称・別称を持つ曲(例中伝11.「突飛喜」=「北国鈴慕」)や、曲名が同じ場合の区別の仕方(例、「下り葉」には興国寺伝と根笹派錦風流伝がある)などの問題がある。

明暗真法流は、すでに伝承が途絶えていることから、教わった数曲をもとにフホウ式の古譜や山上月山師のロツレ式の覆刻などから再構成したものが約30曲ある。明暗真法流は、最後の伝承者といわれる勝浦正山師が、作譜はされたものの、甲乙(かんおつ・オクターブの高い方と低い方)の表記があいまいであり、門人の問いにも「どちらで吹いてもよい」と言われていたそうだ。これらのことから、真法流の多くは「別伝」にしている。また、それとは別の伝承経路のはっきりしない30曲、計60余りは、今回のこのリストには入れていない。

都山・琴古を経て、本曲研究を始めて40年。吹禅としてはもちろん、舞台などで音楽・芸能として吹いてもその魅力がじゅうぶん伝わる曲は100曲程度だと思っている。リストに入れていない明暗真法流や、雑多なものなどを「別則」として、総計220~230曲のレパートリーがあろうか。

琴古流の本曲36曲は、その基本メロディーが2系統に収束され、相互に似ている曲も少なくないことから、私の判断で個性的なものだけ取り上げた。
なお都山流本曲は流祖(ないしは、それ以降の門人の)創作による、明治時代以降からの新本曲になる。(芸大で教わった杵屋正邦師は流祖の作風に長唄の影響があると言っておられたが)、「木枯」「残月」「岩清水」などの個性的な名曲もある。これらも(研究用として)古典本曲譜に起こしてはある。

禅尺八解題
初伝
1-1.調子
別に「大和調子」という曲があるため、それと区別するために「京調子」と呼ぶこともある。禅尺八の一つの根幹をなす、浜松普大寺から京都に移植された最古の十二曲の初めの曲であり、禅的深みのある曲調からしばしば京都明暗寺系の他の曲の前吹きに用いられる。
ツレーゝ~ー、ウーゝメ、ツレーゝ~ー、ハーゝーゝ、ハーゝイ~―、ハローゝ~ー

1-2.一二三之調
私は、「一二三之調」と「鉢返」は、琴古流から逆輸入されてきたのではないかと考えている。ただし、琴古流から、逆に入った本曲はさほどなく、他には名曲「鹿の遠音」がある位か。息の最後を短いメリで止めるが、今日の琴古ではその前に極端に間合いをあけ、オトシの部分も切る(スタッカート)が、本曲ではあくまで自然な息のまま吹く。
メツーメ、メロローメ、ウーメ、ツレーゝロー、ハ(、)ウーメ、メツロメーロ~-、

1-3.鉢 返
 甲(カン)音で多く構成されている曲。 初心者が強く鋭い息の出し方を必要とする、甲音を出すのは難しいが、「一二三」とセットになっているので、初伝の初めに置かれている。
難しければ、初伝の最後の方で取り組むなど、柔軟に対応して構わない。
 甲三ウー、ハーゝイ~-、メハーチーゝメウー、ヒーフー、ハーゝイ~-、

2.手解鈴法
 明暗真法流の、「手ほどき」の曲なので、特に難しい箇所はない。やわらかくゆったりした息を管に注ぐ(吹くのではなく、吐いた息が自然に音になるような感じで)。
ハーゝ―ゝ―、ハイーゝゝゝゝゝ―ハイー、ツレーゝ―、ハ、ローウー、ハ、ロー、メツーローレー、

3.別伝一二三之調
所伝寺不明ながら、奥州系の一二三とされる。琴古系のものとで出しは同じだが、途中から哀愁を帯びた独特のメロディーが展開する。
メツー大メー、メローローメ、ウーゝーメー、ツレーゝ―ゝロー、ツレーハーゝ―イー、カフイハー、ウーゝメ、

4.音取理
 本則の他、畑凡鳥伝は最後に一行加えられている。
 メツーロー、メツーローメ、メチーヘー、メチーレーメ、メチーヘー、

5.盤 渉  博多一朝軒伝
 博多一朝軒は、         吹禅会を行っている。磯ご夫妻は、新婚旅行に夫婦で虚無僧をされたそうだ。
  ツレールー、ツレーレツーメ、ウーゝメ、ウハーハイーハーゝウメ、ウハーハー、(甲音で繰り返す)

6.真 蹟  明暗真法流伝
 真法流の曲がならぶ。小品ながら、それぞれ創造的で、それなりの禅味も感じられる。「真蹟」は、連音の運指が多用されている。
メロローゝゝゝゝ―、ツーゝ―ゝゝゝゝ―メ、ツレーニーゝゝゝゝ―、ツレーメーレー、コロコロゝゝゝゝ―フー、「ツレーチハイーハーウーメ、」
(「  」部、繰り返し)

7.神仏恭敬 明暗真法流伝
  メツー、ツレーゝ―、メツーメ、ツレー、ツレーチ、ハイー、メチーメウー、メチウメツローメ、スルロー

8.誓願文  明暗真法流伝
ツレーチーゝ―、ツレーチーゝ―、チゝ―レー、ツレーチーレーツレーチーレーゝーゝー、メツーメ、

9.讃加羅菅垣 明暗真法流伝
 別名「サンカラサ菅垣」とも。初伝曲中では、唯一のリズムものである。
  ツレーゝ―ツローゝ―、ツーレメチハメチレーツローゝ―、

10.真法流 鉢返 明暗真法流伝
 甲ハーフーゝ―、ハーゝ~-ゝイーハーゝイーハーチー、チーゝゝゝゝゝ―、

11.一月寺 鉢返
 一月寺は下総小金にあった、触頭(青梅の鈴法寺と並ぶ虚無僧寺の総括寺)。
 水戸藩の狩場が近くにあり、梅里・水戸黄門は上京のおり、しばしば一月寺に立ち寄ったという。
甲三ウーハーゝイー、メハーチーゝメウー、ヒーフーハーゝイ~ー、

12.越後明暗寺 鉢返
 越後明暗寺には、「鈴慕」と「三谷」が伝わっている。この明暗寺の「鉢返」はあまり知られていないが、音楽的完成度は高く、演奏会に出してもおかしくない。
甲井ゝ―チーレチー、井ゝ―チーレチー乙ローレチーゝ―ゝ―、

13.高音 竹調
 曲名のごとく、高音に終始する曲。その意味では、鉢返しと同じである。
 甲井ハーゝイー、ヒーーフーーヒーフーハーゝ~、フーハメチーゝメ、

14.大和調子 真・行
吹禅修業のために座して吹くのが「真」の手、托鉢のため街頭で吹くのが「行」の曲である。九州系の「阿字観」などの前吹きとして用いられる。今日の京都明暗派では「献香賛」と解題している。この曲の行の手は、九州系の曲(奥伝13。「阿字観」)などの前吹きに使われる。
   真 ツレーロー、ハーイーハ、ローゝー、ツレーゝチーレ、
   行 ツレー、ロー、チハーハイーハ、チハーハロー、ツレーレチーチレ、

15.回向・遇対・呼笛・応笛
「回向」は題名からもわかるように供養の曲。虚無僧は免許制の専門職で、檀家を持たずその収入源を多く托鉢に依っていたことから、偽虚無僧(売僧)を見つけた時には、制裁を加えた。虚無僧同士が街頭で出会ったとき、作法として吹く曲が決められており(「遇対」)、先に相手を見つけた時に乙(呂)で吹き、それに対する返答を甲(高いほうのオクターブ)で吹いた。「遇対」が吹けるということは、礼儀に適う行為であるばかりでなく、自己が真正の虚無僧であることを証明する手立てでもあった。

回向 ロロー、メローロー、メツーメカレーヘー、ハ(、)ウーメ、ツレーヘ~-、
呼笛 甲 ハーゝイーゝイー、ハーゝ―ゝイ、ヒーフー [完]
息継ぎ回数を減らし三度繰り返す(三度目は一息で)
応笛 メツレーゝ~-、ウーメカハーゝイーゝハ、メチーゝウー三ゝメツーゝメ
遇対  ツー、ツレー、ツレーツローゝ~-、ハーゝウーメ、
 対部は甲で同旋律を吹く

16.松風真之調 所伝寺不明
 太平洋戦争時、北関東で見つけられたと、荒井紫童師(琴古流)に伺った。
ツレー、レーロー、ヘー、ウハーゝイー、メツーローゝハーイハーウーレー、
メハーチーーメウーメツーゝロー、

17.懺悔文 明暗真法流伝
 懺悔文および焼香文は、各々所掲の経文に合わせて吹かれたという。これらの曲は「病人の枕元で吹いても邪魔にならないよう」静かに奏されたという。
我昔所造諸悪業 皆由無始貪瞋痴
   従身口意之所生 一切我今皆懺悔
   ハーヘーヘー、チハチハーチレチメウメツゝー、ハゝ―メツゝ―、ハゝ―メツゝ―ゝゝゝゝ・・・・、コロコローハイハメチー、

18.焼香文 明暗真法流伝
願我身浄如香炉 願我心如智慧火
   念々焚焼戒定香 供養十方三世仏
   甲スチーヘーヘー、メハゝ―フメハチメハー、レゝ―チメウメツー、
メツゝレーメツロー、

19.臥龍軒伝竹調
 金性山臥龍軒は、山形の虚無僧寺。曲は、ユリ(首振り)が多用され、
 メロローヘーメカゝゝゝ―ヘーメカゝゝゝ―メ、メツーメカゝゝゝ―メ、

20.竹調べの曲
 所伝寺など不明。
 ツレーヘー、ウハーメツーローヘー、ハ、ウーメ、ツレー、井ハフーイハメチ

中伝
[第一教程]
1.練些子 中伝の1~6までは、九州の「サシ」の系統の曲が続く。サシに対する漢    字はいずれも当て字であり、サシの語源も今になってはわからない。能には「一さし舞う」という表現があり、それとの関連も今後の研究が待たれる。一連の「サシ」の曲は6番の「薩慈」において音楽的完成をみ、それがより発展したのが「九州鈴慕」であり、さらに16「些志」においてさらにより完成度を高めより精緻なメロディー構成になってゆく。これらを総合的に完成させたのが虚無僧牧新七の伝えた「新七サシ」である。これを基にして、後世「阿字観」ができあがる。
「練些子」は、街頭を練って歩くときに吹く「サシ」であり、暗譜のためか、簡素な構成になっている。
レチーゝ―ゝゝゝゝ―(、)レーチーゝレー、ツレー、ウハーゝウメ、ツレー、

筑後薩
 ツレー、ヘー、ハ(、)メチーメウー、メチメウーカメツーメ、ハロー、

筑後薩字 松音山林棲軒伝
 林棲軒伝は、九州久留米にあった虚無僧寺である。
 ツレーヘーレー、甲ハーチーゝメウチーゝメウーメツメ、スルローハ、メツローゝハ、ウーメカハーイハ、ハローゝ~-、

4. 蘇莫者
 聖徳太子が奈良の生駒山で、馬上よりこの曲を吹かれたと伝えられている。
 この伝説をもとに、明治時代の雅楽家安倍?が、尺八も吹いたことから、四天王寺系雅楽に伝わるこの曲を、尺八譜に起こした。
甲ツレーヘー、レメチーレー、ツレーチーレ、レーヘー、ツレーツメローゝハー、ハー甲レーゝ乙ハ、ハーヘー、

高嶺さし 博多一朝軒伝
高嶺とは、高音のこと。
 ロツーレーツーメカレー、ウハーウーゝメ、ツーレメチハー、ウハーハメイーハー、ウハーウーレーゝツー、ツレーレ~ー、

薩 慈
 短い曲ながら、それまでの「さし」を集大成した楽曲構造になっている。激しさやあごのメリカリ(上下)で、強さや勢いを表現している名曲。
 ツレー、スロー、ウーメカゝ・・・・・メ、ウメツメ、ツレー、ウハーメカゝ・・・・ハイーゝ―ゝハイハ、ウメツメ、ツレー、メツーローメー、メツーメカレー、

九州鈴慕
6「薩慈」とは別に、それまでのさまざまな「さし」を巧みに再構成して、すっきりしたメロディー・ラインに仕上げた。この曲がさらに発展にしたのが16「些志」であろうと、小生は推測する。
ツレール、ハーメ、メチーメウー、メツロメロロ~ー、メツロハーウメウハーハイ~ー、ハロー、

伊予恋慕
 非本曲的な拍子もの。わらべ歌のような素朴で印象的なメロディでできている。諧謔的リズムのおもしろさをもつ。
 甲ツゝレゝ―ツメロハー、ツメロハカメハゝハメハハーゝ――、ハメロゝハー、

志 図
 本州それも、日本の大動脈である東海道の本曲は、もともと浜松に発し、明治期樋口弘道により京都に伝えられた。その浜松におけるもっとも古い本曲

11~2曲のうちのひとつが「志図」である。半音を含まないその音階、「あたり」よりは「すり」を多用するその奏法が、伝承の古さをうかがわせる要因だ。
 甲ハー、チーゝ、ツレーゝ~ー、ハー、チーゝ~、ツレーゝー、チーゝメウーチ、スハーゝー、中ツーメカレ(、)中ツーローゝ~――、

10.覚睡鈴
 勢州岸岡鈴法山普済寺伝。同寺には「鈴法」、「手向」がある。この曲は、起こすための起床ラッパであり、音楽的というよりは、禅味が勝っている。
 ツーメ、レチーメ、チーメ、フーハチーメ、ツレーゝ―、ハーチーレメツー、

11.北国鈴慕
 富山県国泰寺に伝わる曲。元々は祭囃子ででも吹かれた曲であろうか。途中
祭り囃子の笛のメロディーのように「トッピキピ」と聞こえる箇所があることから、別名「トッピキ」とも呼ばれ、「突飛喜」の字があてられている。
 チハーハーゝイーハ~-、チレーチレーチーレチー、ハローロ~-、

12.吉 野
この曲もどこか懐かしい郷愁を感じさせる。「下がり葉」(興国寺伝)などとともに、構成は小さいながら、音楽的にまとまっている曲。「戯曲」として、朝の修行やお勤めのおりには吹くことがゆるされなかったようだ。虚無僧の起源を南朝の遺児楠木正勝に求める伝承では、吉野の地は聖地であり、それにちなむ曲があってもおかしくない。
 ハイー、ハローゝ~-、ハイーゝゝゝハーゝイー、チーレーツロー、

13.獅子踊 明暗真法流伝
 本曲には珍しい拍子もの。長さ関係が洋楽的に確定できるので、拍節感を必要とする。祭囃子から流入したメロディーであろうか、他の楽器で奏しても魅力的な旋律で構成される。民俗芸能として東北地方に伝わるどこかの「獅子踊」で今でも伝承されているのであろうか。
 ハゝ―ローゝ―ハメチーメカハイーゝ―、ハゝ―ローハメチーメカレーハーゝイーハイー

14.興国寺伝 下り葉
 興国寺は、法燈国師・覚(学)心を開祖とする本山。この曲は冒頭、本曲様式(自由リズム)で始められ、中間部では、外曲的にリズムを伴い、最後は再び本曲的な自由リズムの厳かさを以って終わる。「鶴の巣籠」もこの様式である。
 ウーメーウメウメ、ツレー、スルハーヘ~ー、ツレーゝ~―、ハ-ヘ~-、

15.曙之調
 14の「下がり葉」、12の「吉野」とならぶ、わらべうた調の哀愁小曲。
 メロロー、ハロー、レチーゝーゝー、レーローレチー、

16.些 志
 中伝のはじめの四曲の「さし」は、6の「薩慈」において、一定の音楽的完成を示し、7の「九州鈴慕」を経て、この曲においてさらなる発展・完成を示した。曲は、」冒頭から九州特有の激しい「ゆり」を加え、だんだんユリの収束とともに、短い三連符でプツンと切れる。このような激しさとスピードをともなって曲は最後まで進行し、冒頭のメロディーを大きく逸脱することなく、一定の情調をともないながら終える。やや短いながら、九州本曲の特徴を余すところなく伝える名曲といえよう(CD「徳山本曲集 第1巻」所収)。
 ウハーへへへへーー―ハ ウレツ、ツレーヘヘヘヘーーーレツーハー乙ツレー、ツレーメチーメカハー、甲三ウハーメイハー(、)メイハメチ、三ウハーゝ―ゝ、

17.琴古流 三谷菅垣
 「サンヤ」・「スガガキ」は、「サシ」「鈴慕」「流し」などと並んで禅尺八の代表的な曲目になっている(別項参照)。この曲は定番の琴古流本曲のメロディーとは趣を異にし、独特の哀調をあらわす。作家の井上ひさし氏はこの曲が聞こえてくると必ず殺人事件が起こるという(実は、村人あげての偽事件なのだが)『四捨五入殺人事件』を書いた。
 ウーメカゝメカハー、ハーウレー、ツゝレーへー、ウハーメイーメカ、ツレーツメイーメカ、ツゝメイー、ハーゝーウレー、ウゝレー、ヘー、

[第二教程]
18.吾妻之曲
 スハーウレー、スハーウレツーレ~-、チーハ~-、チゝハ~-ハイーハ、

19.琴古流 吾妻獅子
 ウハーウレーヘー、ハーウレ、ツレメハーハメハゝハーメイハ、メチゝ―ゝレツ

20.雲井獅子
 音取 ツレー、チーハ~-、メローハ~-、ツレーレツメロ~-ツレー、
 拍子 甲チーハ~ー、チーハ~―ハイーーハゝ、チーーハ、チーゝレーゝツー

21.琴古流 雲井獅子
 甲三ウハーー、ヘーー、三ウハー、三ウーカハーー、メイハメチーーハメチ

22.紫野之曲
 とんちで有名な一休さんは、尺八史においても重要な人物で、今日でもその愛笛(一節切)が酬恩庵に残っている。この曲は、京都紫野(大徳寺)にもすんだことのある伝禅師作とされる。18「吾妻之曲」、20「雲井獅子」につながる、半音を多用しない中世的な響きの素朴な曲。リズムも拍節的ではない。
 スハーゝイ~-、ハロー、ハーゝイ~―、ハロー、ツレーチハーチレー、

23.京鈴法
 「二四ハーゝ―ゝゝゝ―、ハイーゝゝゝゝ―、ツレール(、)メツーロー、コロコロ・・・カル」ーチメウ、

24.奥州流し
  鈴を振る感じにて吹奏のこと。
 二四五イー二―ゝ―ゝ―ゝ―、スルハーハラゝゝゝゝ―ハイーハ、チーメーチー、ハー、ハラゝゝゝゝ―(、)レー、ハーゝイ~ー、

25.三谷流し
 樺島如風伝。根笹派喜染軒伝といわれる。
 ウハーハーゝイー、ハローゝー、メウー三四ゝゝゝ―ツレー、甲ツレー二三ゝゝゝゝ―

26.一朝軒伝 虚空
 スハー、スルハーゝイーハー、ヘー、ハーゝイーハイ、ハイーゝゝゝゝ―・・・ハイ、

27.恋慕流し
 甲メツーロゝ――ゝ、ウーメカハーゝ~――、スハーゝ~――ゝ、ハイーハ

28.夕暮之曲
 メツーメ、メツーゝメ、ツレー、メ三ウーチへへへ三ウーチーへへメ、メ三ウーゝカウー三、チーカーゝメ、レチ四ハーローメハチー三―ゝチレチレー、

29.下野之曲
 甲ツレー、スメチーメウーー、ハーゝイーハイハーメチレール、

30.伊豆鈴法
 ツレー、スウーゝ―メ、メツーメカレールロー、メツーメカレールーロー、メツーメカレルロー、

31.蓬 莱
 半音を含む近世以来の演歌歌謡曲調の曲。今のわれわれの耳にもなじみやすい。「蓬莱」とは、玄宗皇帝が探しに行かせた「不老不死」の理想の地。こういう曲調の音楽的な曲は、調律管で吹いてもよいかもしれない。
 ハローユル・・・、ハローユル・・・、メハーローユル・・・ーー、メハーチゝ―ゝレー

32.虚 鐸
 吹禅精神に満ちた曲。「虚鈴」に準ずる
 甲ツー、レー、ロー、コロコロ・・・イ、スチーゝメウーチー、スハー、スハー

33.魁之曲
 ツレーゝ~-ゝ~-、ウーゝ~-メ、ツレーゝ~―ウーメ、ツレーゝ~-

34.鑁 字
 ツレールーへー、メツーゝ―メ、ツレーヘー、ツレー(、)ハ(、)ウーゝメ、ツレーゝ―

35.金 剛
 ハローゝー、ヘー、ウハーハラ、ハローヘー、ハロー、ツレーメツーメメツメ、ハローゝー、メハーチーメーチーチー、

[第三教程]
36.滝 落
 甲 ツレールーゝ―ゝ―、ツーゝ~-、ツレーゝ~ー、ハ(、)ウーゝメ、
ツレーゝ~-、乙メツーローゝ~-、ツーメカレローゝ~-、

37.三 谷
 甲 ツール、ツレー、ツーメカレ~ーハ(、)ウーゝメ、ツレーゝ~―、メツー(、)ローゝ~-、ツレール、ツーメカレローゝ~-、

38.秋田菅垣
 甲 ツレール、ホーロイ~-、ハローゝ~―、ツレーゝ~-ローゝ~-ハ~-、メウーゝカーゝメ、ツレーゝ~―、

39.転菅垣
 ウーメカウ~-、ツレーゝ~―ゝ~-、メローロ~-ゝ~-ツレーレロ、ツール、ツレーゝ~-、ハローゝ~-ゝ~-ハウーメ、

40.奥州鈴慕
 メロー、メロロー、レーローヘ~-、ロツーツロ、ツレーヘ~-、チメメツー

41.陸奥鈴慕
 スロー、ツーメカレロー、スルロー、ハーラローゝ―ゝ―ゝ、ハ、ウーメ、ハーゝイーゝ―ゝ―ハ、ハイーゝゝ―ゝーハウメ、ハーハイーゝゝハーハイーゝゝハウ、甲メツーゝロメ、スローゝハ、ウーメ、

42.手向 真
 鈴鹿普済寺伝。「真」と「行」の違いは、一般的には、修行用に一切の装飾的音や表現を排し、部屋の中で吹かれたのが「真」、同じ修行でも外を流して歩くとき吹く
時用いられたのが「行」である。ただし、明暗真法流における「真・行・草」の三虚霊(虚空、虚鈴、霧海じ)は、全くの別曲である。
 メロロー、メツーメカレーロー、メツロー四ハーチーチレー

43.〃  行
 メロー、メツーメ、ツレー、メロー、メウーゝメツーゝロー四ハーチー、

44.栄獅子
 六段で構成されている、リズムものである。明暗真法流の「堺獅子」との関連はまだ検討していないため、何とも言えない。
 スハーゝ―、スハーメ、スハーメーハメ・・・ハーゝゝゝ、ハーゝイ

45.古伝巣鶴
 前吹・初段~五段、後吹きからなる。鶴の羽ばたく様子が「ホー、コロコロー」の手で擬態的に表現されている。なお、古典本曲では、「コロコロ」は素朴に自然に吹く(琴古流のように、すばやく吹いてはいけない)。楽器も非調律管(地なし)を用い、やわらかい自然な息を入れる。いわば無技巧の技巧に徹することが必要である。
甲ツレー、ツレーゝ―、ハー、チーゝ、ツレーレー、スチーゝメウメツーメ、

46.鶴之巣籠
 本会では、九つの「鶴の巣籠」を伝承しているが、その大元と思われるのが、当曲である。曲は九段からなり、初段の前に「音取」が入っている。日本音曲史を千年を区切りに二等分すると、前半は雅楽だけが公式の音楽だった。「音取」という名称も雅楽から援用したと思われる。この名称とは別に、「調べ」、「調子」という尺八本曲独特の呼び名もあり、それは本格的に演奏する前に試しに吹く小曲を意味する。本会を含めほとんどの禅尺八では初伝の1「調子」から学習するが、「調子」は独立した名曲であり、また試し吹きという意味では、京都明暗系の「虚空」などの前吹きとしても用いられる。
 この巣籠は、七・八段が口伝とされているが、これは他段を繰り返して吹くが、省略してかまわないと小生は考える。アッシジの聖フランシスの御霊に捧げるべく現地で催した独奏会のためにかつて暗譜したことがある。
 音取 ウーメーウ~-、ツレーゝ~-ゝ、メローロ~-ゝ―、
 初段 ハイーハイ、ハゝーハイ、ヒーフー、ヒフハ、ヒーフーハメチーゝメウ
 二段 ヤラヤラチーヤラヤラチー、ヤラヤラチヤラヤラチゝウ、
 三段 甲チハーハ~-、チーゝメウメツメ、ツレーレーツロー、
 四段 ハイーゝ、ハーゝゝゝゝゝ―、ヒーフー、 五段・六段 冒頭ほぼ同
 九段 メハーカルチーレチ井ゝチ、フメハチー、井-チー、井-チー、

47.古伝鹿之遠音
 ツーメカレール、スチーメウーメツーメ、ツレール、チーメウーメツメ、
スロー、へー、ツレールチメウメツーメ、ツレー、

48.根笹派錦風流 調
 「・・・」部分はコミ吹き。舌・のどなどを用いずに、吹く息を断続的に切る奏法。原則としてコミは、3~4回とし、その前後は音を延ばす。
「ヘー」はチ(ツ)ギリ奏法で、他流の「ヘ」(なやし)と表記は一緒だが、瞬間的に落とし、元の高さの音にすぐ戻る。強く鋭く吹く。
 この曲は、根笹派の九曲をもとに、その典型的なメロディーを抽出し、後から伴建之が構成した。出来があまりにもすばらしかったせいか、今日では根笹  派の1曲に数えられ、多くの場合、松風を除く他の曲の前吹としても用いられている。
 メ三ウロロー・・・へー・・・、メ三ウメツレー・・・ヘー・・・レ、ハ ハレー・・・、ハロー・・・へー・・・、ウハー・・・ハ、メウゝ・・・ハイー・・・ハゝ・・・ー

49.  〃    下り葉
 ハロー・・・-、コロローメツーゝレー・・・-ル、引チーゝメウー四メツゝ―ゝメーメツロメーロ~・・・・へー・・・、

50.  〃    松風
 ハロー・・・-、コロローメツーゝレー・・・-ル、

51.  〃    三谷清欖
 ツツールーツメ、メツレーレメーレー、ウハーチハレール、チウメツツーロメローロメー、

[第四教程]
52.根笹派錦風流 曙調子  調
 レチーチーレチ-、ロゝ―ゝレーゝローゝ、レチーチーレチーチ、ツレレー

53.  〃     〃   下り葉
 甲ツレーゝーゝチー井―ゝチー井チ井、ツレーゝ―ゝチーレチレ、メツゝ―

54.  〃     〃   松風
 レチーレーゝチーゝカルローゝ、メツゝ―ゝローゝカチゝ―ゝメチーカルイ

55.  〃     〃   三谷清欖
 ハゝ―ラーハメ、メハローゝメーロ~-、メツレーメツレローゝ、メツロカチゝ―チレチーゝメ、カチローメツーゝローカチロー、レゝ―チー三―チレ、

56.  〃    雲井調子 調
 三ツレー・・・-ゝニー・・・-レニ、ウハー・・・-ラー・・・-、

57.  〃     〃   下り葉
 甲メロツーゝ―ゝレ、ウーゝレーウレウ、メロツーゝゝレーゝツ、

58.  〃     〃   松風
 調 ツレーツーゝルレー、ウーゝハーラ、メロゝ―ゝハーゝウゝ―ゝメーウレツーゝレーゝニ、メロツーゝ―ゝレーツレツメロメ、
 松風 メロゝ―ゝハーメローゝハ、ロメツー、ロゝメカツールツールツルーツ、

59.  〃     〃   三谷清欖

60.無限流 合式礼

 ツレーゝ―、メレーレ~-ゝ~-、ニメローロ~-ゝ~-、

61.無限流 奥州鈴慕
 メローロ~-ゝ~-メカゝゝゝ―、三ウーメローロ~-メカゝゝゝロ~-

62.無限流 恋慕流し
 三ウハ~-イハチレツーレ~-、ツレーヘ~-、三ウハーイハチレツーハー、

63.如 意
 ツレール、ウハーア、メチーゝメウー、メツゝ―ロメーロ~ーゝハ(、)スルウーゝメ、

64.門 開
 メローメ、メツーメ、ツレー、メロローメ、メツーメ、ツレールーゝー、ヘー、メロー甲―、

65.善 哉
 メツーメー、メローローーメ、メローローーメ、メツーメ、ツレー、

66.打 波
 現在の京都明暗派では、「打鼓」と改名されているが、元々の名称は「うちなみ」である。
 二四五ハーカ~-(、)ラロー、井―メレー、ツーメカレール、チー四三―ゝ―レ~ロー、

67.歌恋慕
 チハーハハハ~―カ、レツロハレチハゝゝ~-、甲ツルゝレツレチ乙ハゝ

[奥伝]
[第一教程]
1.行 虚空
 ツレーゝ―ゝ~-、ハゝ―メチレーレ~-、メツーメカロー、

2.〃 虚鈴
 スルハーヘーメカ・・・ヘーメカ・・・、ハーヘメカ・・・ハイーゝゝゝ~、

3.〃 霧海箎
 スルハーゝゝゝイ―メカ・・・、メツーメカローメカ・・・、メカヒーカメーニ

4.艸 虚空
 甲ツレー、ハ、引チーメ、ツレー、ハロー、メツーレー(、)引チメウメツー

5.艸 虚鈴
 甲ツレーゝ~-、ハ、引チーメ、チーレー、ハーゝ、引チーゝ、チーレー

6.艸 霧海箎
 スハーゝヘーゝゝゝ―ヘ~-、ハイーヘーゝゝゝ―ヘー、ツレーゝ―メツロ

7.根笹派錦風流 獅子
 ハローハイーハーへ~-・・・-ハ、ウハー・・・ハゝライー、

8.  〃    曙調子 獅子

9.  〃    雲井調子 〃

[第二教程]
10.根笹派錦風流 通り・門付・鉢返
 [通り] ハロー・・・・-ハイーハーヘ~-・・・-ゝ、ウハー・・・-ハーゝイーー・・・-、
 [門付] フヒーメーイフー・・・-、フヒーメーイフー・・・-、
[鉢返] 甲チー、井-メ-井メゝゝゝゝ、メウチ井イ、井-イー四五、 

11.根笹派錦風流 曙調子 通り・門付・鉢返
 レチーレチーレーツーレニーレ、ツレーゝゝレチー、レーゝチー、レーゝチーレチーレチーレ、ツーレニーレ、

12.根笹派錦風流 雲井調子 通り・門付・鉢返
 甲ツレーツレーツーロツーツ、ロツーゝゝゝレー、ツーゝレー、ツーゝゝレー、ツレーツレー・・・、

13.阿字観
 ツレーレレーレ~、乙ウハーゝ、乙メチー甲―ゝメウー、メツゝーゝヘーゝ―メーメツロメーゝローゝ―、ウハーゝ―ハイーハウーメ、

14.奥州薩字
 ツレーゝ~-メカ・・・レ~-メカゝゝゝ(激しいママ)、スルウーメーウメー
四三ゝゝゝ―メツゝ―ゝメ、メツレーゝ~-メカゝゝゝ(激)、

15.布袋軒伝 産安
 [竹調] メウーメツゝ―メ、メローロ~-、メローロ~-ゝ~-ゝ~-、
 [中音] チーハーチゝ―メカ・・・・メカハーゝイ~、ツレー細ユリルハアメチメウ・・
[高音] チーハーユリ・・・ハイーユリ・・・ハゝ―ユル・・・ハイーハ、ハヒメーヒメヒハ、ハヒフハゝ―ユル・・・ハイーユル・・・ハチーハチメウメツメ、

16.  〃  鈴慕
 ウゝメツゝーロー、メローロー、ウゝメツーメカメツレー三四―、メレーゝレ~-ゝ~ー、レチーゝレーチ~ーレ、メツーメーメツー、メツレー三四―、

17.鳳叫虚空
 メロロー、ツー、レー、ハ、ウーゝ~-、ツレー、ツーメカレーロー

18.龍吟虚空
 ツー、ツレー、ツーゝ~-メ、ツレールー、ツーメカレールーゝ、

[第三教程]
19.虎嘯虚空(後虚空)
 甲メツーローゝ~-ハゝ―ゝイー、ハローゝ~-ゝ~-、甲ハ(、)チーゝメウ

20.琴古流 盤渉調
 甲メツーツレー、四メチーメカ五ハーカ、五ハーゝゝゝゝ―ゝイー、

21.琴古流 虚空鈴慕

22.古伝三曲 虚空
 ツレー、ツレー、ツレーレール、メチーゝメウー、乙ハイーハイーハー甲、
メチーゝメウー、ツレー、ツレー、ツレーゝ―ル、メチーゝメウー三ウメツメ、ハローゝ―ゝハ、

23.古伝三曲 虚鈴
 甲ツー、ツレー、ウー、ハーゝ―、ツー、ツレーウー、ハーゝー、ツーレーウー、ハーゝ―、ハーゝ―ゝ―、ハイーゝゝゝゝ、ハーゝゝゝゝ、ハイー、

24.古伝三曲 霧海箎
 ハロー、ハイーハイハー、ハ-ゝ―ゝ―、ハイーゝゝゝ・・・ハイハ、ハーゝゝ・・・-、 

25.明暗真法流 真虚空
 甲ツレーゝ―ゝ―メカゝゝゝ―、レーメチメウハーゝイーハ、メチメウーハイレ

26.  〃   真虚鈴
 甲ツレーメカゝゝゝ―レ、メチメウ、メツーメ、メツーレーニーメカゝゝゝ―、

27.  〃   真霧海箎
 スルハー・・・・ゝイー(10回息切り)、ハイーゝゝゝゝ―ヘヘヘー、

[第四教程]
28.円通寺鈴慕
 所伝寺不明ながら、円通寺は博多一朝軒のことであり様式上からも入れ手の多い九州様式を踏襲している。
 コーロロー、メウ甲メツゝ―メ、メロロー、ウハーゝイーハ、ウゝ―メカゝゝゝゝメーハーゝイーハイーハゝ~―ゝメ、

29.義経鈴慕
 民謡尺八の大家だった菊池淡水師による曲。菊池師は、布袋軒の伝承者引地故山に本曲を習い、また大倉喜七郎創案のオークラウロ(フルートを縦にし、吹き口を尺八様に作ったもの)による合奏団にも参加していた。
曲は、「前唄」・「中唄」・「本唄」・「後ばやし」からなる。
 前唄 甲チハーユリ・・・ハラゝゝイーメカ・・・ハラゝイー、ハチーユリ・・、
 中唄 ハロ、ツルハラロ、ツロハ、ロツレツロツロハ(2回)ロー、ツレー
 本唄 ハロツレーユル・・レニレニチーユル・・チレーチレーチレーレー
 後はやし ハーロゝゝ―ツゝローツゝローハロゝゝー、ツゝロツゝロハロー

30.流し六段 一閑流別伝曲。
普化禅尺八の吹き手であった黒澤琴古の高弟・宮地一閑が一閑流として独立したことから、それと区別するため琴古流を名乗ることになる。この曲は、筝曲の「六段の調べ」をアレンジしたもの。随所にそのメロディが垣間見えるが、自由リズムとかなりの部分を陽旋法(より厳密には小泉文夫氏のいう「律の旋法」)に変えている。同じ変形は、青森津軽郁田流や沖縄の筝曲にも起こっており、今後の研究が待たれる。
ハーレーへーツローへー、チハーハイーメツメツロローハチーハイハ、レーへーツローヘー、メツレローハー、ハローハチーハイハレーヘーロツレーツールー、

31.観 月
 ハーイーハ、ロー、メローメカゝゝゝ―ヘーメカゝゝゝ―、ローゝゝゝ―、

32.第二観月
 ツーレーゝ―、ハ(、)メチーメカゝゝゝ―、ハーゝ(、)メチーゝゝゝ、

33.神仏供養
 甲ツーレー、ツレーゝ~-ゝ~-、メツーメカゝゝゝメカゝゝゝメ、

34.新七薩慈
 虚無僧牧新七が伝えたサシの曲、後、宮川如山が昭和30年代に「阿字観」として整理統合、一世を風靡した。
 甲ツレー~~~~-ヘ~-レゝ―~~~レ、乙ウハー~~~-へ~-ハ、メチー~~~-甲―ゝゝメウー~~~メチーゝメウー、

皆伝
1.琴古流 巣鶴鈴慕
 甲メツーメカレーローーメ、メツレーローーメ、メツレーローーメ、ツレロゝゝゝ(9回)

2.琴古流 鹿之遠音
 甲メツーツレー一三カローメ、メツーツレー(、)メチーメカ四レーカメツーメカ
レツメ、ハツレー一三―カローメ、三ウハーカ五メチーメカハーゝゝゝ―ハイー

松巌軒 鈴慕
 竹林山松巌(安)軒伝だが、確証はない。そのあたりに伝わる鈴慕に近くの虚無僧寺の名を冠した可能性が高い。別に「倭(やまと)鈴慕」の名が付いており、
[竹調] 三ウメロー底ゆり・・・、メローロ~-ヘメカ・・ヘメカ・・・、
 [高音] 甲メツレゝゝ~―ハゝーヘメカ・・・ハーゝイ、ヒーフーヘメカ・・・ヒハハー
 [高音返し] 玉音三ウハハーゆり・・・ハーゝイーハゝーゝイ、ヒーフーヘメカ・・・ヒフ   ヒハゝゝ、
 [鉢返] 三ウゝ―メーチゝ三―ゝレゝ―ゝチ三―三四―三-チレロ、玉音ハローレーゝチー三、

4.紀州真龍伝 巣籠
 音取 ウーメカウ~-、ツレーゝ~-ゝ~-、メローロ~-、ツレーチメウ
 初段 甲ハイーゝ、ハゝ―ハイ、ヒーフー、ヒフハ、ヒーフハメチーゝメウ、
 二段 ホロロー、ホロロホロロホロロ、ホロロハツレロハ、レーツロハ
 三段 甲チーゝレツレー、チーゝレツレー、チーゝレツレールー三一ゝゝゝ
 四段 甲ハイーゝゝゝ―、ヒーフーハウメツレーレルレツー、

5.明暗真法流 鶴の巣籠
ハゝローゝ~―、ハゝローゝ~―、ハゝローハゝロー、ハロツコロコロローヘー、ツーコロコロローヘー、ローゝ―ゝー、甲チーレー、

6.奥州伝 鶴の巣籠(布袋軒・松安軒伝)
  布袋軒伝には秘伝「子別れ」の手あり
  竹調 ハロー、メロローヘヘヘヘー(九回)、八回、七回、メウメツゝ―メ、
  巣籠 メロローヘーゝゝゝ―(八回)、メウメツゝメメツレーカ、ロー
  二段 メウメツゝメーツレーカ、ロー、メウメツメーメウメツロメーロ~

7.根笹派錦風流 流し鈴慕
ニ四五メハーラロー・・・、チヘハーゝメーハー・・・ゝ、ウハー・・・ハーゝイー・・・、ハゝゝイーハゝゝイーハイー・・ハイー・・ハイハメウー、

8.根笹派錦風流 曙調子  流し鈴慕〃
 メウー三―ゝゝゝ―、中ツーロ中ツーレーゝ―ゝ―、レツーレ、ツレーゝ―ゝチーレー・・・

9.根笹派錦風流 雲井調子 流し鈴慕
 メレールレー・・・-、ローメカツーゝ―ゝ―ロツーツ、ロツーツーゝレーツゝゝ
10.越後鈴慕
越後明暗流斎川梅翁伝
  調  大メローーーカ(漸次上げ最後はカル)、メロロー・・・ヘー~~~
  鈴慕 ハーローゝ~ゝ~ゝ~-ハレ、ツレー三二ゝゝゝ―ン、ウハーハラゝ
  鉢返 レチーゝ―三―チレーチレ、メツーユリーメ、ツレーレ~ーチ、

11.越後三谷
越後明暗流斎川梅翁伝
 調 ロツー・・・・-メ(富士を描く)、ツレーメレ~ユルーメ(富士にかかる雲)、
 本手 fレーゝ―三二―メチウー三メツゝメ、pレーゝ―三二―ユルー、
 鉢返 甲井―メカゝゝ―メーチーゝレーチー三―ゝ―ゝ―三四、

12.根笹派錦風流 虚空
 二四五スルハー・・・、メツレー・・・-ルー・・・-ゝ、引チゝ―ゝゝゝ―メ

13.三谷巣籠

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